
「似顔絵」のあらすじ
「いいかい、お嬢さん。似顔絵を完璧に仕上げるための、宇宙の真理とも言える唯一のコツを教えてあげよう……」
男は、返り血のように鮮やかな絵の具が飛び散ったベレー帽を深く被り直し、キャンバスに向かって獲物を狙う鷹のような鋭い眼光を放つ。
そのコツとは、あまりにもシンプルで、あまりにも残酷な「真実の抽出」
モデルとなる人物をただ見るのではない!
その細胞のひとつひとつ、過去の罪、隠しきれない欲望、そして遺伝子の癖までもを、レントゲンのように透視するのだ!
「鼻が高い?」「目が細い?」……そんな表面的な観察は、素人の遊びに過ぎない!
その人物をその人物たらしめている「コア」を見つけ出し、逃げ場を奪うようにロックオンせよ!
そして捉えた特徴を常識の枠組みを粉々に粉砕する勢いで強調せよ!
「少し強調する」などという生温い妥協は許されない。 鼻が高いのなら、それは天を突き刺す巨大な槍として描け!
目が細いのなら、それは時空を切り裂く一筋の地平線として表現せよ!
特徴を誇張し、増幅し、狂気的なまでの密度で塗り固めたとき、そこには本人の実物を遥かに凌駕する「本人以上の本人」が顕現するのだッ!
キャンバスの上に爆誕したのは、もはや人間の形を保っているのかさえ危うい、特徴の化け物!
しかし、見た者は皆、恐怖に震えながらこう口にするのだ。
「……似ている。あまりにも、似すぎている……ッ!!」
描かれたモデルは、あまりにも剥き出しにされた自らの「本質」を突きつけられ、アイデンティティが崩壊し、鏡を見るのが怖くなるという。
これぞ、芸術という名の公開処刑!
さあ、筆を取れ。
貴様が強調するのは、その人物の笑顔か?
それとも、心の奥底に隠した醜悪な真実か……!?

描き応えのある顔





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