
「親切なうどん屋」のあらすじ
「へい! お待ち! ……って、天カスが切れてるッ!?」
昼時のうどん屋、それは一分一秒を争う戦場。
常連客の「天カス、ドバドバで頼むわ!」という一言が、主人の心に火をつけた。
素材に妥協しない彼にとって、天カス抜きなど、魂の抜けたうどんに等しい。
「客を失望させるな。あるもので最高の一皿を作れ!」
主人は厨房の奥へ消えた。
数分後、戻ってきた主人の手には、小皿に盛られた「何か」が握られていた。
「へい、限定の『隠し味』だ。これを入れて食ってくれ!」
客は何も疑わず、そのトッピングを豪快に汁へ溶かし込んだ。
「……ん!? なんだこの、鼻に抜ける強烈な個性と、野生の旨味は!? 天カスを遥かに凌駕する濃厚なコクだ!」
客が恍惚の表情で完食したその直後、主人が誇らしげに語った真実。
「そりゃあ俺のチ○カスだからな! 」
客の箸が、音を立てて止まった。
店内に漂うのは、出汁の香りではなく、耐え難い生物的臭気。
親切心が招いた、この日一番の「地獄」が、丼の底から静かに立ち上っていた……。

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